ゴジラ対ヘドラ

2004年11月17日 ゴジラ
さてさて、本日も衛星映画劇場で放送された作品についてのレビューを。今回は公害問題が色濃く反映されたゴジラ映画の異色作、「ゴジラ対ヘドラ」を。


公害問題が激化する日本。日常茶飯事に工場の煤煙で空気は汚され、海にはヘドロが流されていた。そんな中、隕石から公害を吸って生きる怪獣・ヘドラが誕生した。ヘドラは駿河湾から田子の浦に上陸すると工場の煤煙などを吸ってどんどん巨大化していく。やがて成長したヘドラは硫酸ミストを撒き散らして人々を骨にしていく。その時、地球の危機を察知して怪獣島からゴジラが現れた。かくしてゴジラとヘドラの激しい戦いが始まる。



まず最初にカミング・アウトしておくが、私はこの作品が大嫌いだ。
何を隠そう、グロいったらありゃしない。人はバンバン死んでいくし(あんまり表現は良くないが)、人が白骨化していく姿を生々しく映し出している。
正直言って「恐怖映画」という意味では初代「ゴジラ」を超えている。かつてこんな怪獣映画が存在したであろうか。現在の怪獣映画を見ている限りでは、ここまでの「怖さ」は想像できない。

ところが、この「ゴジラ対ヘドラ」は昭和ゴジラの中でもピカ一の出来であると思う。
最初に「嫌い」だとか言って何だ、と思うかもしれないが、作品的にはとてつもない名作であることに間違いないだろう。

何故かと言えば、ヘドラを完全なメタファーとして描き、徹底的に怪獣映画の重厚さ怖さを描ききったこと自体が偉業だと思うからだ。
当時は怪獣映画の対象年齢が徐々に下がり始め、ゴジラもかつてのメタファーではなくヒーローとして描かれていた。もう、ゴジラ映画では恐怖の対象をゴジラに求めることが出来ない。その為に、恐怖の対象は必然的に敵怪獣へと移行されることになったのだ。

それにしても、新たにヒーローとなったゴジラはかつてない致命傷を負うことになる。今までにもクモンガに片目を潰されたことがあったが(67年「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」参照)、今回はそれ以上の猛攻撃をくらう。何せヘドラは公害怪獣である。ヘドラのあらゆる攻撃に、またもや目は潰され、さらに片手は白骨化するのだ。
それ程の致命傷をくらったゴジラを見て、我々は素直にゴジラを応援することが出来る。
それも、恐怖の対象をヘドラのみに絞ったからこそ、なのだ。

とはいっても、ラストで去っていくゴジラは、ヘドラを生み出した人間への怒りの表情を見せていく。
そのゴジラの表情には何か感慨深いものがあるだろう。

1971年に製作されたゴジラ映画第11作「ゴジラ対ヘドラ」。間違いなく異色な作品だが、怪獣映画で怖さを味わいたい方には是非。



「ゴジラ対ヘドラ」
監督:坂野義光 脚本:馬淵薫・坂野義光
特殊技術:中野昭慶 音楽:真鍋理一郎

矢野徹:山内明 矢野研:川瀬裕之
矢野敏江:木村敏江 毛内行雄:柴本俊夫 富士宮ミキ:麻里圭子
伍平:吉田義夫 ゴジラ:中島春雄

主題歌:「かえせ!太陽を」(歌:麻里圭子)
封切:1971年7月24日 観客動員数:171万人

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