いよいよ「ドラえもん」の声優陣交代までのカウントダウンが始まった。もうすぐブラウン管からあの聞き慣れた声は聞けなくなってしまう。そう思うと寂しい限りだが、せめて残り少ない日々を旧作「ドラえもん」映画を見ながらしっかりと噛み締めたいと思う。恐らく、今後3月までは「ドラえもん」の話が主流になると思うので、どうか皆さん末永くお付き合い願いたい。
そんなこんなで今日のお話は、1986年に公開された「ドラえもん のび太と鉄人兵団」

どこでもドアで北極に来たのび太は、ロボットの部品を見つけた。それはあまりにも大きいため、ドラえもんたちは鏡の中の世界でロボットを完成させることにした。鏡の中の世界(鏡面世界)は、左右が逆なこと以外は現実の世界とそっくりで、人間は誰もいない世界だ。
 完成したロボットに喜ぶドラえもんたち。ザンダクロスという名前をつけ、そのロボットにのって楽しんでいたが、ロボットには恐ろしいミサイルがついていたのだった…。
現実にもどったのび太は、ロボットの持ち主だという謎の少女リルルに出会い、鏡面世界に入るための道具をかしてしまう。
 のび太とドラえもんが鏡面世界をのぞいてみると、そこには地球を攻撃するための基地が作られているではないか!? そして、ロボットを指揮しているのはリルルだった!! リルルは、ロボットの国メカトピアから地球に鉄人兵団を呼ぶためにやってきたロボットだったのだ!
地球が危ない!! メカトピアの鉄人兵団と闘う決心をしたのび太たち。
 そんな時ケガをおったリルルはしずかに助けられる。しずかの心のこもった手当に、地球征服は間違っているのではないかと考えはじめる…。
 果たして、のび太たちは地球を鉄人兵団からまもることができるのか…。リルルはドラえもんたちと闘ってしまうのか…!?


(※映画「ドラえもん」25周年オフィシャルサイト http://dora-movie.com/より抜粋)

「ドラえもん のび太と鉄人兵団」は1986年に製作された「ドラえもん」映画の第7作目。今回のテーマは「ロボット」。本作はこれまでとは違い全体的にハードな作風で、「ドラえもん」映画の中でもスケールの大きな戦いが繰り広げられる。その為か、現在セルソフトに収録されている予告編にはドラえもんが「今度の映画は何が何だかとにかく凄いぞ。こりゃぁ!」なんていう台詞が収録されていたりする。

さて、この作品は25作の「ドラえもん」映画の中でも極めて評判の良い作品である。映画のタイトルこそ「ロボットもの」よろしくなカンジなんだけど、この作品はドラえもんらしい「友情」を描いた作品なんだよね。
何を隠そうシリーズの中でも「泣ける作品」であることは間違いないんだよ。ホントに。それは、やはりゲストキャラクターであるリルルのキャラゆえなんだよなぁ。
リルルはもともと祖国「メカトピア」の人間狩り作戦を実行するために地球に送られたスパイだったんだけれど、事故で怪我を負いしずかに助けられ、次第に人間に心を開いていく。もともと「機械」という無機質の物体だったリルルが、「心」というモノに目覚めていく姿は非常にイイ。
ラスト、タイムパラドックスによって消えていくリルルの姿は、涙無しでは見られないだろう。っていうか、何度見てもあのシーンは泣ける。しかも大杉久美子さんが歌う主題歌「私が不思議」がリルルが消えていくシーンにかかるので、より一層涙を誘う。とにかく演出の仕方が上手いんだ。
だからこそ、ラストの学校のシーンやのび太の最後の台詞「そうさ。リルルは天使さ!」が心に染みる。
こういうのは、どちらかといえばある程度の年齢になった方が共感できるだろうなぁ。

と、いきなりリルルの話から入ったが、前半から中半にかけてはいつもの日常をきちんと描いている。それが何かイイ。日常をきちんと描くからこそ、非日常がより冴え渡るのだから。だからこそ、のび太たちのロボットの使い道は、「戦う」ことではなく、「どこかへ泳ぎに行くための移動手段」なのだ。
「日常の中の非日常」。これが大長編ドラえもんの魅力だしね。

そーいう世界を描くことによって、通常の登場人物たちが際立つ。例えばのび太としずかの恋物語だとか、スネ夫とジャイアンのやりとりだとか、ドラえもんとのび太のケンカだとか、いつもコミックスやアニメで見ている光景が自然と映画に入っていく。こういうのって、カンタンなようでなかなか難しい。
特にこの作品は「侵略モノ」であるからして、鉄人兵団による東京大破壊のシーンがあったり、湖においてのバトルシーンがあったりと、現実離れした設定が多い。その中においてきちんと日常を描いたのはさすがだな、って思うんだよね。
何度も言うけど、やっぱり「子供向け」だからって馬鹿にしちゃぁいけないんだよ。

さて、最後はいつもと同じように主題歌のお話。
今回の主題歌は先ほども言ったように大杉久美子さんが歌う「私が不思議」。今までの主題歌がドラえもん側の歌だったのに対し、今回はどちらかといえばサブキャラクター・リルルのテーマみたいなカンジ。曲調もいつもとはちょっと違った雰囲気。作詞を手掛けたのは毎度お馴染み武田鉄矢なんだが、今回もその手腕を十二分に発揮している。
あともう一つ、本作は「ドラえもん」映画第1作「ドラえもん のび太の恐竜」の主題歌「ポケットの中に」がもう一つの主題歌として使われている(但し今回は大山さんのソロと言う構成)。あくまで本作品のメインテーマではないけれど、このテーマに沿って「鏡面世界」の無人のスーパーで買い物するドラえもんたちの姿は何か微笑ましかったなぁ。。。

「ドラえもん のび太と鉄人兵団」。間違いなくオススメ出来る作品なので、興味のある方は是非見てみてはいかがでしょう?(^。^)y-.。o○



「ドラえもん のび太と鉄人兵団」
原作・脚本:藤子・F・不二雄 監修:楠部大吉郎
音楽:菊池俊輔 監督:芝山努

ドラえもん:大山のぶ代 のび太:小原乃梨子
しずか:野村道子 ジャイアン:たてかべ和也 スネ夫:肝付兼太
リルル:山本百合子 ミクロス:三ツ矢雄二 隊長:田中康朗

主題歌:「私が不思議」(歌:大杉久美子)
    「ドラえもんのうた」(歌:大杉久美子)
    「ポケットの中に」(歌:大山のぶ代)
封切:1986年3月15日 観客動員数:260万人

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