地球防衛軍

2005年5月1日 映画
前回の「海底軍艦」に続いて、今日も東宝特撮映画のお話。
山崩れ、陥没など奇怪な現象が相次ぐ富士山麓の村に、突然ロボット怪獣・モゲラが現れた。町を破壊するモゲラを防衛隊はなんとか撃退する。同じ頃目撃された円盤らしき光。その円盤の基地と推測される場所に謎のドームが出現、そこには第5惑星人ミステリアンがいた。彼等は地球人との結婚を要求するとともに、地球侵略を狙っていた。これを拒否し攻撃を仕掛けた防衛隊は、ドームの怪光線の前に全滅に近い打撃を受けてしまう。地球を守るには戦うしかない。全世界が一致団結して地球防衛軍を結成する。敵の光線を跳ね返し、自らも同じ威力の光線を発する新兵器、マーカライト・ファープをはじめ、数々の新兵器でミステリアンに攻撃を開始する地球防衛軍。光線と光線が火花を散らす攻防戦が今、富士の裾野に繰り広げられる。

http://www.toho-a-park.com/より抜粋)

今回の作品、「地球防衛軍」は、「ゴジラ」「ゴジラの逆襲」「空の大怪獣ラドン」に続いて東宝が排出した、初の「侵略もの」である。この作品は超兵器「マーカライト・ファープ」やロボット怪獣・モゲラなど幾多のメカが登場し、東宝メカの地位を不動のモノとした。また伊福部昭の重厚な「地球防衛軍マーチ」も、この作品の魅力の一つである。

この作品は東宝特撮映画の中でも評判の良い作品で、結構期待して見たのだが、個人的な感想はまあまあといったところかなぁ。決してつまらなくはなかったんだけど、展開が全体的に単調で、素直に面白いとは残念ながら感じれなかった。
その原因は何なのか、見た後に考えてみたんだが、「ゴジラ」に比べて人間ドラマの描き方が希薄に感じたからじゃないかな、と思った。キャスティング的には「ゴジラ」に出演した平田昭彦、志村喬、河内桃子、佐原健二(「ゴジラ」には石原忠の名で出演)など豪華なメンバーを揃えているのにも関わらず、平田昭彦が充分なキャラとしての説明をせずに消息を絶ってしまったり、ヒロインの二人のキャラの描き分けが不十分だったりとツメの甘さが目立つ。そして主人公の佐原健二も「ただの科学者」といったカンジで正直言って感情移入が難しい。ただその分、敵である「ミステリアン」の方は個性が光っていた。おかしな被り物しててどう考えても強そうには見えないんだけど、土屋嘉男の不思議な雰囲気ある声と「半径3キロの土地と地球人女性との結婚の自由」といった、何だかワケのワカラン要求だけで地球人側のキャラの個性の無さをカバーしているといえよう。

本編はそんなカンジでいまひとつなのだが、円谷監督の演出した特撮の方は良く出来ている。
本作品の魅力の一つとして、素晴らしいメカ描写が挙げられるが、何といってもロボット怪獣・モゲラの描き方がイイ。東宝初のロボット怪獣として登場したモゲラだが、ゴジラやアンギラスとは違う、メカとしての魅力を充分に醸し出していた。登場は少々唐突だが、映画前半の見せ場といえる御殿場市の破壊シーンは見物。またその問答無用の破壊から生み出される、ロボットとしての「冷たさ」も同時に感じ取ることが出来る。このモゲラはここで人気を博し、94年の「ゴジラVSスペースゴジラ」に再登場。コチラのほうも初代に負けず劣らずの魅力を醸し出し、特撮・メカファンに絶大な支持を得ることになる。
もう一つ、モゲラと同時に本作の魅力あるメカが、地球防衛軍の所有する光線兵器「マーカライト・ファープ」である。敵の光線を跳ね返し、敵と同程度の光線を発射するという、正直言って随分都合の良い兵器なのだが、その斬新な設定が逆に良い。
ただ難を言うと、モゲラやマーカライト・ファープの発する光線の光学処理がいささか実写にマッチしていないのが残念だ。また前半で鳴り物入りで登場したモゲラが、後半であっけなくやられてしまうのが拍子抜けである。

とまぁ、かなり辛口なカンジで言ってはしまったが、この作品が後に確立される「空想科学映画」の先駆となったのもまた事実。初のメカ怪獣であるモゲラも含めて、「原点に還る」という意味では必見の作品といえるだろう。

最後に余談だが、横浜市港北区に所在する「新横浜ラーメン博物館」には、昭和32年当時の町並みが再現されているが、そのセットの一角にある映画館のセットではこの作品のポスターとスチールを見ることが出来る。この作品を見た後にはコチラへ立ち寄るのも面白いかもしれない。







「地球防衛軍」
製作:田中友幸 脚本:木村武
音楽:伊福部昭 特技監督:円谷英二 監督:本多猪四郎

渥美譲二:佐原健二 江津子:白川由美
岩本広子:河内桃子 白石亮一:平田昭彦 川波博士:村上冬樹
森田司令:藤田進 ミステリアン統領:土屋嘉男 安達博士:志村喬

封切:1957年12月28日

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