GWも後半に入ってそろそろUターンラッシュが始まったようで。まぁ、ウチのブログはそんなのとは無関係であるわけでして、今日も東宝特撮のお話。
作品は「キングコングの逆襲」

ネルソン司令官、次郎、スーザンの三人は国連調査船の原子力潜水艦で海底油田の調査を行なっていた。ある日、南海のモンド島近くで艦が故障し、三人はその島に上陸した。ネルソンは陸上動物の研究者でもあり、モンド島が巨大な類人猿キング・コングの住んでいる場所だと知った。案の定コングが現われスーザンに親し気な素振りを示して次郎たちを驚かせた。コングにはスーザンの言葉が分るらしかった。一方、このコングを生け捕りにしようと狙っている一味がいた。ドクター・フーとマダム・ピラニヤである。彼らは北極近くの地中に眠り、ウランよりも強い放射能を持つエレメントXを掘るために、コングを使おうと考えていたのだった。フーはメカニコングというロボットでやってみたが、放射能に邪魔され失敗していた。スーザンがコングを動かすことが出来ると分ると、フーはコングを捕獲し、彼女をも狙った。一方、コングがフーに捕ったと知ったネルソンたちは国連の許可を得て北極に向ったが、途中東京に寄った時、フー一味に捕われ極地に連れてこられた。そこではコングがエレメントXを掘り出そうとしている姿が見られた。しかし、鎖を切って逃げ出したコングは、海を泳ぎ、東京に現われたのである。フーは早速メカニコングとネルソンたちを連れ、東京に向った。やがて、コングとメカニーコングの戦いが東京の真中で始った。その頃、マダム・ピラニヤはフーとエレメントXの所有権を争って負け、ネルソンたちを逃がした。マダムは某国の秘密諜報員で、フーを利用してエレメントXを手に入れようとしていたのだった。一方、コングの巧妙な作戦で電線に触れたメカニコングは焼けてしまい、勝ち誇ったコングは、フーの乗った船を沈めると、南の島をめざして泳ぎ去っていった。

http://www.walkerplus.com/movie/kinejun/より抜粋)

「キングコングの逆襲」は、1967年夏休みに「長編怪獣映画ウルトラマン」と共に公開された怪獣映画である。この作品は東宝が「キングコング対ゴジラ」と同様に米・RKO社からキングコングを借り入れ、日米合作で製作した東宝創立35周年記念作品としても知られている。

タイトルこそ「〜逆襲」となっているが、62年の「キングコング対ゴジラ」とはストーリー的に全く無関係。新たな発想で作られた作品のようだ。見る前は正直何にも期待してなかったのだが、最初から最後まで一気に見れる作品だった。面白い。同時期のゴジラ映画が「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」や「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」などでどんどん子供向けになっていく中で、ある意味異質な大人向けの作品だった。
設定やストーリーはどちらかといえばオリジナルのRKO版「キングコング」に近い。南海の孤島にたどり着いてキングコングを見つけて、生け捕りにしたあげく、街にやって来てしまうという黄金パターンをきちんと踏襲している。またキングコングとゴロザウルスのバトルシーンは、明らかにオリジナルのキングコング対ティラノサウルスを意識しているし、モンド島近海での大ウミヘビとの対決なんかは完全にオリジナルのリメイクだね。
と、オリジナルをかなり意識してはいるが、メカニコングの登場やドクター・フーの悪役ぶり、ラストの東京タワーでの戦いなど、この作品オリジナルの見所も多い。その中でも特筆すべきは、やはりラストの東京タワーでの対決だろう。怪獣映画で東京タワーが出てくる時と言うのは、たいてい周りのビル街と一緒にタワーが破壊されるというのがお約束だったが、今回は何を隠そう東京タワーが戦いの舞台なのだ。驚くなかれ、ヒロインのスーザンを奪ったメカニコングはキングコングから逃れる為、東京タワーによじ登り始める。もうおわかりだろうが、キングコングも後を追って東京タワーに登るのだ。RKO版ではエンパイア・ステート・ビルや、ワールド・トレード・センターにスパイダーマンよろしく登ったキングコングだが、建造物の上で敵と対決したのは始めて。一見笑える展開だが、主役の宝田明の迫真の演技や伊福部昭の音楽と相まって緊迫感充分。またメカニコングが破壊した、東京タワーの鉄骨がヒロインに降り注いだりと、演出も非常にリアルで、なかなか楽しむことが出来るだろう。正直、キングコング東京上陸〜東京タワーまでの展開は少々消化不良なのだが(メカニコングのビル破壊が一シーンだったり、増上寺での二体の格闘が短かったり)、それを一気に取り返す出来で実に素晴らしい。メカニコングの方はメカゴジラと比べてお世辞にもかっこいいとは言えないけど、動きがちょっとマヌケでイイ味出していた。
その他の見所を挙げるとするならば、先ほども触れたキングコングとゴロザウルスの対決シーンか。ハッキリ言ってしまえばゴロザウルスは“ただの恐竜”なのだが、その体からは想像出来ないほど俊敏で、キングコングにドロップキックを何発も繰り出す姿には感動さえ覚えた。ここでは結構あっけなくキングコングにやられてしまうゴロザウルスだが、その後このファイトを買われたのか、翌年の「怪獣総進撃」にも登場し、凄まじいドロップキックでキングギドラを転倒させていた。個人的には、是非平成の世に蘇って欲しかったのだけど・・・。

と、特撮的な見所が多いのがこの作品だが、ストーリーの主軸はあくまで人間である。怪獣同士の戦いは結構ユーモラスだが、人間ドラマは結構重い。特に悪の科学者・ドクター・フー(天本英世)と、某国の工作員・マダム・ピラニヤ(浜美枝)のやりとりなどは人間の思惑などが絡んで濃い作りになっている。「ゴジラ」映画が特撮のトータルタイムが長くなっていたのに対して、コチラのほうは本編の方が長かったような気もするし、それ故に人間ドラマがしっかり盛り込まれていてラストのピラニアの死から生まれる悲劇性を演出できていたとも言える。まぁ、ラストのドクター・フーの最期はちょっと笑ってしまったが。物語の最後でキングコングが敵役に止めを刺すのもイイ。そりゃツッコミどころを探せばあるかもしんないけど、面白かったからそんなの探す気にもなれない。やっぱり楽しめればそれで良いワケで。主役3人の軽快なセリフのキャッチボールも楽しいしね。
それにしても、天本英世はやっぱりイイ味だしてるよなぁ。彼と言えば「仮面ライダー」死神博士を思い浮かべる方がほとんどだと思うが、「三大怪獣地球最大の決戦」や「オール怪獣大進撃」などの東宝特撮でも独特の存在感を醸し出していた。最近だと「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」で不気味な老人役を演じていたっけ。残念ながら彼は2003年に他界してしまったが、もう一度彼の勇姿を見たかった。
彼のほかだと浜美枝もゴージャスなカンジでイイ。さすがは「ボンドガール」。常連・宝田明も文句のつけようが無いしなぁ。

やっぱり良いスタッフ、良いキャストに恵まれると、良いモノが出来るよね。






「キングコングの逆襲」
製作:田中友幸 脚本:馬淵薫
音楽:伊福部昭 特技監督:円谷英二 監督:本多猪四郎

カール・ネルソン:ローズ・リーズン 野村次郎:宝田明
スーザン・ワトソン:リンダ・ミラー マダム・ピラニヤ:浜美枝
国連新聞記者:アンドリュー・ヒューズ ドクター・フー:天本英世

封切:1967年7月22日

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