気付いたらもう木曜日になってしまったワケなんだけど・・・。
今日のお話は、先日予告した、映画「交渉人 真下正義」のお話。

クリスマス・イブを雪乃(水野美紀)とデートするはずだった警視庁交渉課準備室課長の真下(ユースケ・サンタマリア)は、室井管理官(柳葉敏郎)に呼び出され、何者かにのっとられた東京の地下鉄の最新鋭実験車両事件に挑むが……。



「交渉人 真下正義」は、173億円のメガヒットを記録した「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の続編として製作された、「踊る」のスピン・オフ・ムービーである。主演の真下役にはユースケ・サンタマリアを起用し、共演には水野美紀、寺島進、国村隼、柳葉敏郎など豪華メンバーが顔を揃えた。

前作が興収に見合うほど良く出来ていて、日本映画の中でもトップクラスの面白さだったので、この作品にもかなり期待をさせてもらった。それで見た結果は、その期待に充分に応えてくれる作品だった。
正直な話、主演のユースケ・サンタマリアでどこまでのモノが出来るか不安な部分もあったが、そう心配する必要もなかったようだ。確かに、まだまだ不完全な部分もあるものの、及第点といえるであろう。前作で見せてもらった交渉する際の独特の「話し方」もグレードアップして良かったと思うしね。
でもユースケがカッコ良く見えたのは、やはり脇役陣のお陰であることに他ならない。ヒロインの水野美紀はもちろんのこと、個人的には片岡役を演じた国村隼さんを絶賛したい。彼といえば、最近は「ローレライ」「ゴジラ FINAL WARS」「半落ち」「海猿」など数多くの話題作に出演し、見る機会が多い俳優さんだが、その独特の口調と存在感で、「秘密を守る男」を見事に演じていた。今やシブい脇役をやらせたら、彼の右に出る者はいないと言ってもいいぐらいだ。さらにそのシブさに増して、口に禁煙パイプをくわえてるのだからたまらない。昔からシブい役者にパイプは付き物だ。さすが本広監督はわかっている。しかも止めと言わんばかりにその無表情から、絶妙なギャグが飛び出すのだから言うコト無しだ。
国村さん以外でも宇崎竜童を彷彿させる寺島進や、今回は出番が少ないが大きな存在感を醸し出していた柳葉敏郎も素晴らしい。逆に個人的にビックリしたのは石井正則が意外と出来ること。彼はドラマ「ナースのお仕事3」での敬語を使いまくる患者役が印象的だったが、今回もそれに近い雰囲気で映画の雰囲気を明るくしてくれた。彼はお笑いよりこっち路線で行ったほうがイイんじゃないのか?あとは出番は少ないが大和田伸也さんは私としては素晴らしい俳優さんだと思うし、さっきも触れたが、水野美紀が正規のヒロインとして登板してくれたのが嬉しかった。彼女は昔から大好きな女優さんだったので(キッカケは「ガメラ2」だったが)、これからの活躍にも大いに期待したい。
そして忘れてはならないのが「SAT」隊長役の高杉亘さん。「ゴジラ×メカゴジラ」の機龍隊隊長を始めとして、何故か隊長役の多い彼だが、松田優作を彷彿させる低音の美声で実にカッコイイ。

とまぁ、キャスティングが素晴らしいの一言。これだけで1800円払う価値がある作品だと思うのだが、内容自体も非常に良く出来ている。ラストシーンが少々スッキリしないで、わかりづらかったのが残念だが、最初から突っ走って観客を飽きさせることが無い。実は私、これを見た日は3時間強しか寝てなくて、見る前はメッチャ眠かったのだが、その眠気を吹き飛ばすぐらいの面白さだったと思う。地下鉄を題材にしたのも新鮮さがあってまた良かったしね。そういえば、日本映画でこういうパニック映画で意外と少ないんだよな。列車パニックで思い浮かぶのも、あの有名な「新幹線大爆破」ぐらいだもの。他に思い浮かぶとパニック映画といえば「東京湾炎上」ぐらいか。災害モノだと「日本沈没」とか「地震列島」とかあるけど、乗り物パニックってホント滅多に無いよなぁ。
ま、そういった意味でも低迷する日本映画に渇を入れる映画になっていたと思う。

ところで、技術的な出来はどうだったのか、というコトだが、パニックの主役となる「クモE−4 600」がミニチュアだということは最後まで気付かなかった。何故か知らんが「ミニチュア」と聞くと昨今ではマイナスイメージに聞こえる訳のワカラン風潮があるのだが、そういう方にはこの映画を見てミニチュア特撮の良さを再認識してもらいたい。ホント、動きも撮り方もミニチュアには見えないから。やっぱり、無機物であるCGにムリに頼るよりも、人の手で作られた有機物のミニチュアに頼ったほうがイイ時もあるんだよな。

音楽面でも見所は多い。ジャクソン5を始めとする様々なアーティストが参加していたり、クラシック曲が多く用いられたりと聞き応え充分。もちろん、今回も松本晃彦の躍動感溢れる楽曲は健在。特に前作では予告編にも使われた「危機一髪」には鳥肌が立った。

でもね、ここまでかなり持ち上げたけど、不満が無いわけでもない。まず一番違和感を覚えたのが、小泉孝太郎演じる小池。小池といえば、前作で「監視カメラルーム」のシーンに登場したバリバリのPCオタクだったわけだが、今回は何か明るいイメージになっちゃったな。このキャラって、もっと冷酷な雰囲気漂うキャラじゃなかったっけ(恩田すみれの小池に対しての「捜査員のお弁当食べてるっ!」のセリフも印象的だったし)?
また、クモのミニチュアの出来は素晴らしいのに、劇中で大きく二回起こる大爆発のシーンのCG合成には、ツメの甘さが残る。せっかく、クモであれだけの技術を見せてくれたのだから、爆発シーンも実際の爆発シーンを撮って、実景に合成した方が良かったんじゃない?

だが、全体的に見たらそんな不満なんか心配御無用。


だってこんなに面白かったんだから。







「交渉人 真下正義」
製作:亀山千広 原案:君塚良一
脚本:十川誠志 音楽:松本晃彦 監督:本広克行

真下正義:ユースケ・サンタマリア 柏木雪乃:水野美紀
木島丈一郎:寺島進 矢野君一:石井正則 小池茂:小泉孝太郎
前主十路:西村雅彦 熊沢鉄次:金田龍之介 草壁:高杉亘
片岡文彦:国村隼 室井慎次:柳葉敏郎

挿入歌:「サンタが街にやってくる」(歌:ジャクソン5/テンプテーションズ)

全国東宝系で絶賛上映中。

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