「戦国自衛隊1549」感想(ネタバレ)
2005年7月14日 映画
早く行かないと公開が終わってしまうので、先日この「戦国自衛隊1549」を見てきた。
「戦国自衛隊1549」は、1979年に公開され、配収13億5000万円という大ヒットを飛ばした、映画「戦国自衛隊」を軸に、「終戦のローレライ」で知られる福井晴敏が新たに原作を担当した作品である。監督には、「ゴジラ×メカゴジラ」で、内外問わず高い評価を受けた手塚昌明が登板し、キャストには江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史、北村一輝、伊武雅刀、生瀬勝久など豪華メンバーが勢ぞろいした。
初めに言っておくが、この作品は、オリジナルの「戦国自衛隊」のリメイクでもなんでもない。そんなことは製作が決まった時点でスタッフが何度も言っている。だから、リメイクを期待して見るのはお門違いだし、オリジナルと比較するのはあまりにもナンセンスだ。
そういうワケで、今回はあえてオリジナルの「戦国自衛隊」とは全く別のモノとして話を進めたい。っていうか、一本の映画として見た方が絶対面白いし。
本作は、「ローレライ」と同様に福井氏原作というコトで、いやがうえにも期待は高まった。いやそれ以上に今回は手塚昌明監督が登板したことのほうが私の胸を躍らせた。手塚監督といえば、これまで「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」「ゴジラ×メカゴジラ」「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」と3本のゴジラ映画を監督し、エンターテイメント性溢れる素晴らしい作品を作り上げた。特に「×メカゴジラ」における自衛隊描写は特筆に値する。その手塚監督が、自衛隊をテーマにしたこの作品を手掛けるのだから、傑作を期待するのも当然だろう。
これまでの手塚監督作品は、様々な制約に囚われていた部分があったのも事実だった。「メガギラス」は割と自由な発想で製作出来たようだが、機龍シリーズは予算も削られ、「ハム太郎」との同時上映の関係で上映時間も短縮。そのため、泣く泣く削り取ってしまったシーンも多いという。だが今回は2時間近い上映時間を与えられ、制作費も15億円という、近年の日本映画でも破格の額で製作された。よって、実に手塚監督らしさが反映された映画となっている。
これは率直な感想だが、一本の映画として実に手堅くまとまっている。もともと手塚監督はまとめるのが上手い人だが、最初から最後までノンストップで一気に物語を運び、観客を飽きさせない努力をしている。「×メカゴジラ」などに見られたメッセージ性は若干弱いようにも思えるが(「大事な人を守るために戦う」というテーマはあるものの、実際のところは「自分たちが生きている現在を守る」ためにタイムスリップしたというイメージのほうが強く、一体どちらが目的なのかあやふやで、劇中でも答えは出されていない。まぁ、劇中で鹿島がそれについて言及はしていたので、それほど気になることではない)、それを補うほど画面に力があるので特に問題は無いように思える。寧ろ本作は、物語(も面白いけど)やテーマ性より、キャストの魅力や、重厚な自衛隊描写、さらに実物大で作られた天母城の凄まじい破壊シーンなどを楽しむべきだと思う。中でもアナログとデジタルが融合したクライマックスのバトルシーンは圧巻だ。何といっても本物の90式戦車やAH−1Sヒュイコブラが開幕から画面に登場するのだから、兵器ファンにはたまらない。昨今は自衛隊のイラク派遣などで自衛隊がクローズアップされてはいるが、何だかんだと言って自衛隊は庶民にとってはまだまだ遠い存在だ。正直な話、自衛隊をTVで見るのは自然災害と札幌雪祭りぐらいだし、唯一自衛隊が活躍できた怪獣映画も近頃はめっきり数が減ってしまった。そう言った意味でも、自衛隊を身近に感じることの出来る映画として、本作は特筆すべきなのではないだろうか。ちなみに、物語の根幹とまでは言わないものの、自衛隊の大原則である「専守防衛」についての言及があったりと、現在の自衛隊が抱えている問題に踏み込んだりもしているので、その辺りを併せて見るのも良いだろう。
とはいっても、本作はあくまで娯楽映画だ。やはりエンターテイメント性を最大限に打ち出すのが筋と言うものだろう。そういった意味でも、本作は成功しているといえる。主役の二人の存在感の大きさは言うまでも無いが、今回は予想以上に藤介役の中尾明慶が良かった。彼とは同い年なのだが、自分よりも年下である13歳の役を見事に演じきっていた。それでいて、実は彼は歴史上の重大人物の誰かだった(これは実際に映画を見て確かめて欲しい)と言われても、全くもって違和感が無い。しかも重厚な本作において、気休め的な役割を担っているのもまたイイ。
ところで、本作のキャスティングはやはり怪獣映画を意識した部分があるように思える。斉藤道三を演じた伊武雅刀とその家臣である七兵衛を演じた北村一輝の主従関係は、明らかに「ゴジラ FINAL WARS」を意識したものだし、蜂須賀小六役の宅間伸は何を隠そう、手塚監督の「ゴジラ×メカゴジラ」に出演していた、また嶋大輔も似たような役で「ウルトラマンコスモス」に出ていたし、意外なことに鈴木京香はまだ無名な頃に「ゴジラVSビオランテ」に出演していたりする。
だからなのか個人的には嬉しい顔ぶれが揃った。中でも北村一輝はやっぱり素晴らしい。今回は伊武さんに反乱を起こすなんてことは無いが(笑)独特の存在感を示して、悪役とはまた違ったカッコ良さを醸し出している。特に剣を振り回す際の殺陣の綺麗なことったらありゃしない。改めて「何てアクションの上手い人なのだろう」と思わせてくれた。
まだまだ書きたいことはたくさんあるが、字数制限の関係でこの辺りにしておこう。
軽くまとめると、「戦国自衛隊1549」は時代劇的な要素は少々薄いが、エンターテイメント性に溢れた傑作であったように思う。手塚監督にはこれを軸にして、更なる傑作を撮って頂きたい。
「戦国自衛隊1549」
原案:半村良 原作:福井晴敏
脚本:竹内清人・松浦靖 特撮監督:尾上克郎 監督:手塚昌明
鹿島勇祐:江口洋介 神崎怜:鈴木京香
飯沼七兵衛:北村一輝 濃姫:綾瀬はるか 森彰彦:生瀬勝久
三國陸曹長:嶋大輔 与田:的場浩司 藤介:中尾明慶
蜂須賀小六:宅間伸 斉藤道三:伊武雅刀 的場毅/織田信長:鹿賀丈史
主題歌:「涙の数だけ」(歌:Full Of Harmony)
全国東宝系で公開中。
陸上自衛隊の人工磁場発生器の実験中に事故が発生、的場一佐(鹿賀丈史)率いる精鋭部隊が460年前の戦国時代にタイムスリップしてしまった。仲間を救いだし、歴史を修正するために的場の元部下で元自衛隊の鹿島(江口洋介)と事故を引き起こしてしまった神崎(鈴木京香)はロメオ隊とともにタイムスリップを敢行するが……。
「戦国自衛隊1549」は、1979年に公開され、配収13億5000万円という大ヒットを飛ばした、映画「戦国自衛隊」を軸に、「終戦のローレライ」で知られる福井晴敏が新たに原作を担当した作品である。監督には、「ゴジラ×メカゴジラ」で、内外問わず高い評価を受けた手塚昌明が登板し、キャストには江口洋介、鈴木京香、鹿賀丈史、北村一輝、伊武雅刀、生瀬勝久など豪華メンバーが勢ぞろいした。
初めに言っておくが、この作品は、オリジナルの「戦国自衛隊」のリメイクでもなんでもない。そんなことは製作が決まった時点でスタッフが何度も言っている。だから、リメイクを期待して見るのはお門違いだし、オリジナルと比較するのはあまりにもナンセンスだ。
そういうワケで、今回はあえてオリジナルの「戦国自衛隊」とは全く別のモノとして話を進めたい。っていうか、一本の映画として見た方が絶対面白いし。
本作は、「ローレライ」と同様に福井氏原作というコトで、いやがうえにも期待は高まった。いやそれ以上に今回は手塚昌明監督が登板したことのほうが私の胸を躍らせた。手塚監督といえば、これまで「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」「ゴジラ×メカゴジラ」「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS」と3本のゴジラ映画を監督し、エンターテイメント性溢れる素晴らしい作品を作り上げた。特に「×メカゴジラ」における自衛隊描写は特筆に値する。その手塚監督が、自衛隊をテーマにしたこの作品を手掛けるのだから、傑作を期待するのも当然だろう。
これまでの手塚監督作品は、様々な制約に囚われていた部分があったのも事実だった。「メガギラス」は割と自由な発想で製作出来たようだが、機龍シリーズは予算も削られ、「ハム太郎」との同時上映の関係で上映時間も短縮。そのため、泣く泣く削り取ってしまったシーンも多いという。だが今回は2時間近い上映時間を与えられ、制作費も15億円という、近年の日本映画でも破格の額で製作された。よって、実に手塚監督らしさが反映された映画となっている。
これは率直な感想だが、一本の映画として実に手堅くまとまっている。もともと手塚監督はまとめるのが上手い人だが、最初から最後までノンストップで一気に物語を運び、観客を飽きさせない努力をしている。「×メカゴジラ」などに見られたメッセージ性は若干弱いようにも思えるが(「大事な人を守るために戦う」というテーマはあるものの、実際のところは「自分たちが生きている現在を守る」ためにタイムスリップしたというイメージのほうが強く、一体どちらが目的なのかあやふやで、劇中でも答えは出されていない。まぁ、劇中で鹿島がそれについて言及はしていたので、それほど気になることではない)、それを補うほど画面に力があるので特に問題は無いように思える。寧ろ本作は、物語(も面白いけど)やテーマ性より、キャストの魅力や、重厚な自衛隊描写、さらに実物大で作られた天母城の凄まじい破壊シーンなどを楽しむべきだと思う。中でもアナログとデジタルが融合したクライマックスのバトルシーンは圧巻だ。何といっても本物の90式戦車やAH−1Sヒュイコブラが開幕から画面に登場するのだから、兵器ファンにはたまらない。昨今は自衛隊のイラク派遣などで自衛隊がクローズアップされてはいるが、何だかんだと言って自衛隊は庶民にとってはまだまだ遠い存在だ。正直な話、自衛隊をTVで見るのは自然災害と札幌雪祭りぐらいだし、唯一自衛隊が活躍できた怪獣映画も近頃はめっきり数が減ってしまった。そう言った意味でも、自衛隊を身近に感じることの出来る映画として、本作は特筆すべきなのではないだろうか。ちなみに、物語の根幹とまでは言わないものの、自衛隊の大原則である「専守防衛」についての言及があったりと、現在の自衛隊が抱えている問題に踏み込んだりもしているので、その辺りを併せて見るのも良いだろう。
とはいっても、本作はあくまで娯楽映画だ。やはりエンターテイメント性を最大限に打ち出すのが筋と言うものだろう。そういった意味でも、本作は成功しているといえる。主役の二人の存在感の大きさは言うまでも無いが、今回は予想以上に藤介役の中尾明慶が良かった。彼とは同い年なのだが、自分よりも年下である13歳の役を見事に演じきっていた。それでいて、実は彼は歴史上の重大人物の誰かだった(これは実際に映画を見て確かめて欲しい)と言われても、全くもって違和感が無い。しかも重厚な本作において、気休め的な役割を担っているのもまたイイ。
ところで、本作のキャスティングはやはり怪獣映画を意識した部分があるように思える。斉藤道三を演じた伊武雅刀とその家臣である七兵衛を演じた北村一輝の主従関係は、明らかに「ゴジラ FINAL WARS」を意識したものだし、蜂須賀小六役の宅間伸は何を隠そう、手塚監督の「ゴジラ×メカゴジラ」に出演していた、また嶋大輔も似たような役で「ウルトラマンコスモス」に出ていたし、意外なことに鈴木京香はまだ無名な頃に「ゴジラVSビオランテ」に出演していたりする。
だからなのか個人的には嬉しい顔ぶれが揃った。中でも北村一輝はやっぱり素晴らしい。今回は伊武さんに反乱を起こすなんてことは無いが(笑)独特の存在感を示して、悪役とはまた違ったカッコ良さを醸し出している。特に剣を振り回す際の殺陣の綺麗なことったらありゃしない。改めて「何てアクションの上手い人なのだろう」と思わせてくれた。
まだまだ書きたいことはたくさんあるが、字数制限の関係でこの辺りにしておこう。
軽くまとめると、「戦国自衛隊1549」は時代劇的な要素は少々薄いが、エンターテイメント性に溢れた傑作であったように思う。手塚監督にはこれを軸にして、更なる傑作を撮って頂きたい。
「戦国自衛隊1549」
原案:半村良 原作:福井晴敏
脚本:竹内清人・松浦靖 特撮監督:尾上克郎 監督:手塚昌明
鹿島勇祐:江口洋介 神崎怜:鈴木京香
飯沼七兵衛:北村一輝 濃姫:綾瀬はるか 森彰彦:生瀬勝久
三國陸曹長:嶋大輔 与田:的場浩司 藤介:中尾明慶
蜂須賀小六:宅間伸 斉藤道三:伊武雅刀 的場毅/織田信長:鹿賀丈史
主題歌:「涙の数だけ」(歌:Full Of Harmony)
全国東宝系で公開中。
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