昭和ガメラを語る? 〜「ガメラ対大悪獣ギロン」から「宇宙怪獣ガメラ」まで〜
2005年12月17日 映画
さて、昨日の続き。
今日は前置き無しでレビューに入ろう。
(5)「ガメラ対大悪獣ギロン」
シリーズ5作目。前回のバイラスに続き、再び宇宙怪獣がガメラを襲う。今度の敵はナイフのような容姿を持つ、大悪獣ギロンだ!
ストーリーは、突如現われたUFOに乗りこんだ明夫とトムは、宇宙へと連れ去られ、謎の惑星の女宇宙人に捕えられてしまう。二人を救いに来たガメラは、宇宙人の番犬怪獣・ギロンと戦う!
前作があまりにも酷かったので、全く、いやホントに期待してなかったんだが、しなくて良かった。いや、前作よりは数倍マシなんだが、決して面白いと言えるシロモノではない。何を隠そう、敵の宇宙人は二人しか出てこない。星の生き残りだとかいう説明はされているけど、明らかな人件費の削減。物語もほとんど敵の惑星で繰り広げられるので破壊のカタルシスも無く、緊迫感も薄い。だいたい、劇中でバイラス星人のことが語られているのに、大人たちの誰もが宇宙人を信じていないこと自体矛盾しているので拍子抜け。それに肝心の宇宙人だって、二人じゃ侵略もクソもあったもんじゃない。見せ場であるハズのガメラ対ギロンの対決も相変わらず単調で盛り上がらないことこの上ない。申し訳程度に出てきた宇宙ギャオスとの対決のほうがよっぽど盛り上がったぞ。
シリーズも後半。そろそろシリーズにかげりが見えてきたのだろうか?見せ場はガメラの鉄棒における大車輪のみか。
(6)「ガメラ対大魔獣ジャイガ−」
大阪万博を舞台としたシリーズ6作目。ガメラにウェスター島の怪獣・ジャイガーが襲い掛かり、大阪で激突する。
万博会場に展示しようとしていた、ウェスター島の「悪魔の笛」の影響で大魔獣・ジャイガーが蘇ってしまった。大阪に上陸し、破壊の限りを尽くすジャイガーに立ち向かうガメラは、体内に卵を産み付けられてしまった。果たして、ガメラの生死やいかに・・・。
久々の力作の(ような気がする)作品。前作、前々作ととんでもない作品が続いたが、今回は少なくとも映画として一つの形を成している。時事的な万博をストーリーに絡めたのはなかなか上手いし、物語的にも破綻していない。当たり前のことだが、昭和ガメラでは破綻していないことのほうが少ないんだから仕方が無い。何より嬉しいのは久々に破壊シーンがあることだ。ジャイガーが大阪の街を破壊するシーンは、久々にガメラ映画が怪獣映画であることを思い出させてくれる。ガメラの体内に産み付けられたジャイガーの子供を撃退しに行くシーンも、多少の無理はあるものの、それなりに楽しませてくれる。ところが、せっかくガメラが蘇ったというのに、ラストの万博会場での決戦シーンがどうも盛り上がらない。これはガメラシリーズ全てにいえることだが、どうも対決シーンが物足りないんだよな。さすがにパビリオンを壊せとは言わないが、大阪城はバトルの過程で破壊しても良かったのではなかろうか。(その代わりに通天閣を倒すシーンはあるが)。マグネチューム光線は面白い武器だし、もう少しアイデアを練れば、「バルゴン」を超える名作になったんじゃないかなぁ?
最終的に盛り上がりに欠けるので、結局のところ佳作に終わってしまった作品である。
(7)「ガメラ対深海怪獣ジグラ」
71年に公開された7作目。社会問題となっていた水質汚濁を絡めた意欲作。深海怪獣ジグラがガメラを襲う。
ストーリーは、地球征服のためにやってきたジグラ星人は地球人を操り、自らの科学力を見せ付けるために東京にマグニチュード13の地震を起こして降伏を迫る。ところが、ジグラ星人はガメラに宇宙船を壊された上に、母性と異なる海の水圧で怪獣・ジグラに巨大化してしまった。ジグラを倒すためにやってきたガメラと鴨川シーワールドを舞台に地球の存亡をかけた戦いが始まる・・・。
事実上の昭和シリーズ最終作(何故かは後述)。またもや宇宙人ネタ。マンネリが完全に露になった作品。違うところは地球人が操られるといったことぐらいか。何ていうか今作は、子供を絡めたためにムリが重なりすぎた作品。映画を見ればわかるが、いくら何でもあんなにカンタンに宇宙船から脱出したり、物語に絡むことは不可能。ご都合主義の典型だ。でもそれがガメラなんだから仕方ないか。
また宇宙人の設定にしてもムリがありすぎ。水圧で巨大化するのは考えたな、とは思ったが、東京に大地震を起こすのは何故?だいたいマグニチュード13なんて地震を起こすメカニズムがわからない。ってか、マグニチュードが1上がるとエネルギーは32倍になるんだから、マグニチュード13なんてとんでもない数になると、東京タワーがぐんにゃり折れるぐらいで済むハズがない。それに、東京が地震に襲われるのに鴨川が無事なのもワケがわからない。さらに言えば地震のシーンが全くないので緊迫感もゼロ。「日本沈没」みたいに迫力ある映像は期待してないけど、せめて地震の過程ぐらい見せろよな。
ガメラとジグラの対決なんかはもう言うまでも無い。最後はガメラの火炎噴射のみで片がついちゃうので、バトルのカタルシスはあまり楽しめない。
とにかく、ムリにムリが重なった作品。大映も倒産間際だったわけで、かなり苦しかったのかもしれんな。
(8)「宇宙怪獣ガメラ」
1980年に公開された番外編。過去の作品のライブフィルムを使い、宇宙ギャオス以外の全ての怪獣が登場する。
ストーリーは、地球征服を企むザノン号は、ギャオス、ジグラ、バイラス、ジャイガー、ギロン、バルゴンの6大怪獣を地球に送り込んできた。コレに対し、我らがガメラが立ち向かう!
どうもガメラ映画は「4」の倍数が付く作品はどうしようもない出来になるようで、2度目の爆弾が投下された。いや、「ギロン」も「ジグラ」もひどかったけど、今回はそれの比じゃない。「バイラス」さえも越すかもしれない。
何故かと言えば、驚くなかれ特撮シーンのほとんどは過去のシリーズのフィルムの使いまわしなのだ!確かに、ゴジラ映画にも「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」という流用満載の作品があったが、あちらは最終決戦は新撮だったし、何より人間ドラマがしっかりしていたので違和感は少なかった。しかし、本作は特撮を流用するために人間のドラマをくっつけたとしか思えない。まぁ、過去の作品の総集編と位置づければ見れなくも無いが、だったら人間ドラマをしっかりして欲しいなぁ。ところどころに登場するマッハ文朱の変な踊りは失笑モノだし、何より登場人物たちに感情移入できない。特撮も過去の流用ばっかで面白くも何ともないし、やっと新撮があるかと思えばゴジラを馬鹿にしたようなシーンだった。わざわざ追加するようなシーンなのだろうか?冷めるだけだぞ。またガメラと宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999の共演シーンなんか唐突すぎて訳がわからん。
良かった点は、各怪獣が登場するたびに名前をテロップ表示したこと(何故かバイラスは「宇宙怪獣」でなく「水中怪獣」となっていたが)とナレーションが「奥様は魔女」の中村正だっだこと。正直言って、それだけ。
さて、次回は昭和「ガメラ」のまとめ。そして平成との比較について語っていこう。それでは。
「ガメラ対大悪獣ギロン」
監督:湯浅憲明 特撮:藤井和文
「ガメラ対大魔獣ジャイガー」
監督:湯浅憲明 特撮:金子友三
「ガメラ対深海怪獣ジグラ」
監督:湯浅憲明 特殊撮影:藤井和文
「宇宙怪獣ガメラ」
監督:湯浅憲明 特殊撮影:築地米三郎/藤井和文/金子友三(流用映像)
今日は前置き無しでレビューに入ろう。
(5)「ガメラ対大悪獣ギロン」
シリーズ5作目。前回のバイラスに続き、再び宇宙怪獣がガメラを襲う。今度の敵はナイフのような容姿を持つ、大悪獣ギロンだ!
ストーリーは、突如現われたUFOに乗りこんだ明夫とトムは、宇宙へと連れ去られ、謎の惑星の女宇宙人に捕えられてしまう。二人を救いに来たガメラは、宇宙人の番犬怪獣・ギロンと戦う!
前作があまりにも酷かったので、全く、いやホントに期待してなかったんだが、しなくて良かった。いや、前作よりは数倍マシなんだが、決して面白いと言えるシロモノではない。何を隠そう、敵の宇宙人は二人しか出てこない。星の生き残りだとかいう説明はされているけど、明らかな人件費の削減。物語もほとんど敵の惑星で繰り広げられるので破壊のカタルシスも無く、緊迫感も薄い。だいたい、劇中でバイラス星人のことが語られているのに、大人たちの誰もが宇宙人を信じていないこと自体矛盾しているので拍子抜け。それに肝心の宇宙人だって、二人じゃ侵略もクソもあったもんじゃない。見せ場であるハズのガメラ対ギロンの対決も相変わらず単調で盛り上がらないことこの上ない。申し訳程度に出てきた宇宙ギャオスとの対決のほうがよっぽど盛り上がったぞ。
シリーズも後半。そろそろシリーズにかげりが見えてきたのだろうか?見せ場はガメラの鉄棒における大車輪のみか。
(6)「ガメラ対大魔獣ジャイガ−」
大阪万博を舞台としたシリーズ6作目。ガメラにウェスター島の怪獣・ジャイガーが襲い掛かり、大阪で激突する。
万博会場に展示しようとしていた、ウェスター島の「悪魔の笛」の影響で大魔獣・ジャイガーが蘇ってしまった。大阪に上陸し、破壊の限りを尽くすジャイガーに立ち向かうガメラは、体内に卵を産み付けられてしまった。果たして、ガメラの生死やいかに・・・。
久々の力作の(ような気がする)作品。前作、前々作ととんでもない作品が続いたが、今回は少なくとも映画として一つの形を成している。時事的な万博をストーリーに絡めたのはなかなか上手いし、物語的にも破綻していない。当たり前のことだが、昭和ガメラでは破綻していないことのほうが少ないんだから仕方が無い。何より嬉しいのは久々に破壊シーンがあることだ。ジャイガーが大阪の街を破壊するシーンは、久々にガメラ映画が怪獣映画であることを思い出させてくれる。ガメラの体内に産み付けられたジャイガーの子供を撃退しに行くシーンも、多少の無理はあるものの、それなりに楽しませてくれる。ところが、せっかくガメラが蘇ったというのに、ラストの万博会場での決戦シーンがどうも盛り上がらない。これはガメラシリーズ全てにいえることだが、どうも対決シーンが物足りないんだよな。さすがにパビリオンを壊せとは言わないが、大阪城はバトルの過程で破壊しても良かったのではなかろうか。(その代わりに通天閣を倒すシーンはあるが)。マグネチューム光線は面白い武器だし、もう少しアイデアを練れば、「バルゴン」を超える名作になったんじゃないかなぁ?
最終的に盛り上がりに欠けるので、結局のところ佳作に終わってしまった作品である。
(7)「ガメラ対深海怪獣ジグラ」
71年に公開された7作目。社会問題となっていた水質汚濁を絡めた意欲作。深海怪獣ジグラがガメラを襲う。
ストーリーは、地球征服のためにやってきたジグラ星人は地球人を操り、自らの科学力を見せ付けるために東京にマグニチュード13の地震を起こして降伏を迫る。ところが、ジグラ星人はガメラに宇宙船を壊された上に、母性と異なる海の水圧で怪獣・ジグラに巨大化してしまった。ジグラを倒すためにやってきたガメラと鴨川シーワールドを舞台に地球の存亡をかけた戦いが始まる・・・。
事実上の昭和シリーズ最終作(何故かは後述)。またもや宇宙人ネタ。マンネリが完全に露になった作品。違うところは地球人が操られるといったことぐらいか。何ていうか今作は、子供を絡めたためにムリが重なりすぎた作品。映画を見ればわかるが、いくら何でもあんなにカンタンに宇宙船から脱出したり、物語に絡むことは不可能。ご都合主義の典型だ。でもそれがガメラなんだから仕方ないか。
また宇宙人の設定にしてもムリがありすぎ。水圧で巨大化するのは考えたな、とは思ったが、東京に大地震を起こすのは何故?だいたいマグニチュード13なんて地震を起こすメカニズムがわからない。ってか、マグニチュードが1上がるとエネルギーは32倍になるんだから、マグニチュード13なんてとんでもない数になると、東京タワーがぐんにゃり折れるぐらいで済むハズがない。それに、東京が地震に襲われるのに鴨川が無事なのもワケがわからない。さらに言えば地震のシーンが全くないので緊迫感もゼロ。「日本沈没」みたいに迫力ある映像は期待してないけど、せめて地震の過程ぐらい見せろよな。
ガメラとジグラの対決なんかはもう言うまでも無い。最後はガメラの火炎噴射のみで片がついちゃうので、バトルのカタルシスはあまり楽しめない。
とにかく、ムリにムリが重なった作品。大映も倒産間際だったわけで、かなり苦しかったのかもしれんな。
(8)「宇宙怪獣ガメラ」
1980年に公開された番外編。過去の作品のライブフィルムを使い、宇宙ギャオス以外の全ての怪獣が登場する。
ストーリーは、地球征服を企むザノン号は、ギャオス、ジグラ、バイラス、ジャイガー、ギロン、バルゴンの6大怪獣を地球に送り込んできた。コレに対し、我らがガメラが立ち向かう!
どうもガメラ映画は「4」の倍数が付く作品はどうしようもない出来になるようで、2度目の爆弾が投下された。いや、「ギロン」も「ジグラ」もひどかったけど、今回はそれの比じゃない。「バイラス」さえも越すかもしれない。
何故かと言えば、驚くなかれ特撮シーンのほとんどは過去のシリーズのフィルムの使いまわしなのだ!確かに、ゴジラ映画にも「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」という流用満載の作品があったが、あちらは最終決戦は新撮だったし、何より人間ドラマがしっかりしていたので違和感は少なかった。しかし、本作は特撮を流用するために人間のドラマをくっつけたとしか思えない。まぁ、過去の作品の総集編と位置づければ見れなくも無いが、だったら人間ドラマをしっかりして欲しいなぁ。ところどころに登場するマッハ文朱の変な踊りは失笑モノだし、何より登場人物たちに感情移入できない。特撮も過去の流用ばっかで面白くも何ともないし、やっと新撮があるかと思えばゴジラを馬鹿にしたようなシーンだった。わざわざ追加するようなシーンなのだろうか?冷めるだけだぞ。またガメラと宇宙戦艦ヤマト、銀河鉄道999の共演シーンなんか唐突すぎて訳がわからん。
良かった点は、各怪獣が登場するたびに名前をテロップ表示したこと(何故かバイラスは「宇宙怪獣」でなく「水中怪獣」となっていたが)とナレーションが「奥様は魔女」の中村正だっだこと。正直言って、それだけ。
さて、次回は昭和「ガメラ」のまとめ。そして平成との比較について語っていこう。それでは。
「ガメラ対大悪獣ギロン」
監督:湯浅憲明 特撮:藤井和文
「ガメラ対大魔獣ジャイガー」
監督:湯浅憲明 特撮:金子友三
「ガメラ対深海怪獣ジグラ」
監督:湯浅憲明 特殊撮影:藤井和文
「宇宙怪獣ガメラ」
監督:湯浅憲明 特殊撮影:築地米三郎/藤井和文/金子友三(流用映像)
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